だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
バシッ!
突然、寝ている湊の頭をママが叩いた。
湊が叩かれた頭を押さえている。
強く叩いたわけではないのだろうが、意外といい音がしたので私も湊も驚いてママの顔を見つめていた。
「湊、私に言ってないことあるでしょ?」
ママはニヤリと笑ってそう言った。
湊はバツの悪そうな顔をして、ふいっと顔を背けた。
「顔を背けるってことは、後ろめたいことがあるって証拠なの。変わんないわね、変なところで意地張るところ」
そう言って、湊の点滴を手際よくはずして片付けていた。
私は何となく口を出してはいけない気がして、二人の様子をじっと見つめていた。
「で、何?もしかして調子悪いの?一回ちゃんと検査するわよ」
ママはさらりとそう言った。
湊はじっと黙ったまま、絆創膏の貼られた自分の左腕を眺めていた。
部屋の中の空気は少しずつ流れ始めていた。
湊は、なんとかそこに踏みとどまろうと、藻掻いているようにも見えた。
小さな子供が母親に怒られているような空気。
ママが、湊を心配している証拠だと思った。