だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「別に、大したことない」
「なら検査くらいいいじゃない」
「忙しい」
「それでも融通のきく会社を選んだのは、どこの誰?」
反論の余地を与えない程はっきとした口調で、ママは言った。
湊は何も言えなくなって、だんまりを続けていた。
都合の悪いこと。
言いたくないこと。
そういうことがあると、湊はすぐに黙ってしまう。
その度に、私がどれだけ悲しくなるのか。
湊はきっと知らないんだろうな、と考えていた。
そっと、ママは湊のベッドに腰掛けた。
そして、まだ観念しない湊に向かって目線を向けた。
「心配くらいさせなさい。家族なんだから」
湊は黙ったまま、ママを見つめた。
「我慢できる限りしても構わないわ。でもね。表面に体調の悪さが出てきたら、それはもう我慢してはいけない、という証拠なの。そういう時のために私達がいるのよ。看護婦という私。それと、貴方を心から心配してくれる、大切な人」
湊は私を見た。
そして、悲しそうな顔をした。
私を見つめる目が、ずっと揺れているのを知っていた。