だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「・・・前に一度あったような感覚で・・・」
「あぁ、昔みたいに?」
「そう・・・。頭、痛いんだ」
何とか搾り出したその一言にママは笑った。
私は、湊の顔を見つめたまま動けずにそこにいた。
「何でそれを言うのに、そんなに時間がかかるのよ!」
ははは、と笑うママの声は、さっきまでの重苦しい空気を拭く飛ばしてしまった。
私は立ち上がって、湊のベッドの傍に立っていた。
「たまにあるから、言わなくてもいいと思ってたんだよ」
「たまにあるなら、その度に言えばいいじゃない」
ママはそう言った。
湊は少しふらつきながら上半身を起こしてベッドに座ろうとした。
おぼつかない様子だったので、そっと背中に手を当てる。
熱の籠った身体は、やっぱりとても辛そうだった。
「言ってもなくならないだろう。痛みとか、辛さとか」
そう言って、支えた私の手を自分の手元に引き寄せた。
繋がれた手は、ここにいろ、と言われているように強引だった。
その強引さにいつもの湊を感じで、そっと指を絡めて応えた。
繋ぎ慣れない私の左手と、同じようにぎこちない湊の右手。
そこには、いつものいとしさが溢れていた。