だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「風邪くらいで大げさな。」
表情を緩めて湊は笑った。
それと同時に、ママも笑った。
それもそうね、と言って。
私は、なぜか安心して涙がこぼれそうになった。
「さ。じゃあ私は人気看護婦なので、仕事が呼んでるわ。二人とも気をつけて帰りなさい。会計は、私がしておくから」
「母さん」
ん、と振り向いたママは半分仕事の顔に戻っていた。
湊を目に映して少しだけ母親の顔に戻る。
そのママを目に映して、湊がふっと笑った。
「ありがと。心配かけて、ごめん」
ママに向けた湊の素直な言葉は久しぶりだった。
私の前で自分を出してくれている湊。
ママに対しては心配をかけないようにしているのか、外の顔を作っているような気がしてならなかった。
ママも同じように考えていたのか、にっこりと嬉しそうに笑っていた。
「最後の『ごめん』は余計だな。早く治しなさい。落ち着いたら、みんなでご飯でも食べに行こう」
そう言って病室から出て行くママを見送った。
湊が繋いでいる手に、少しだけ力を込めた。
私はそれを受け止めていた。