だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
家に帰ると、湊は部屋ではなくリビングで寝たい、と言った。
私もその方が何かと楽だったので、部屋からお布団を運んできた。
リビングの奥に和室がある。
そこに布団を敷いて、湊を寝かせた。
出かける時は明るかった空が、今は夕闇に紛れてもう暗い。
電気をつけようとすると湊が小さく首を振った。
「今、蛍光灯の光は少し辛い。窓の外が綺麗だから、そのまま」
そう言って、私の方を向いていた。
背中から差し込む光は綺麗だけれど、なんだか怖い色をしていた。
オレンジというよりも、やけに赤に近い光がリビングの大きな窓から差し込んでいた。
雨は、予想通り雪混じりになっている。
外の道は凍って歩くのもままならない状態になっているのだろう。
「時雨、こっちにおいで」
潤んだ目で湊が私を呼ぶ。
少し苦しそうに発せられるその声に、胸を鷲掴みにされてしまうようだった。
そっと湊の布団の近くに座る。
湊はそんな私を見つめて、そっと手を伸ばしてきた。
熱い湊の右手が、いつものように私の左手を包む。
優しく触れるその手を握り返して、ゆっくりと湊を見つめていた。