だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「なんだか、怖いね」
湊の腕の中で、二人で窓の外の赤く染まる空を見つめていた。
そこに混ざる雪混じりの雨が、時折窓に当たる。
「でも、惑わされるほど綺麗な景色が見られるのも、この時間なんだ」
確かにそうかもしれない。
夕焼けは赤く目に焼き付いて忘れられない。
一日が終わるこの景色は、明日の始まりに向けて一度色を落とす。
暗く広がる宵闇は、私達の愚かさまで隠してくれる。
そのことを私達は知っていた。
「夕霙。昼間の雨が冷やされて少しずつ雪に変わっていく瞬間。溢れ出るものも、あんな風に固まっていけばいいのに」
ユウミゾレ。
雨が雪になろうと固まるように。
湊は何を閉じ込めてしまいたいのだろう。
そんな風にしてしまったのは、もしかして私なのかもしれない、と考えていた。
「綺麗だな。夕日と霙が反射してる。こうやって一日が終わっていくんだ」
次第に霙の量が多くなり、夕日の色はどんどん夜の色に溶けていった。
確かに訪れる夜。
終わりに向かう『今日』。
今見ている夕暮れは、今まで見たどの夕暮れよりも切なく綺麗で。
それでいて、とても恐ろしいものだった。