だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「確かに雨は雪になって固まる。だけど、また溶けていくんだよ」
「・・・溶ける・・・」
「そう。だって、雪解けが必ず来るもの」
「・・・そうか」
「どんなにカタチが変わっても、温かさに触れれば本当の姿に戻っていくんだよ」
私は窓の外をぼんやりと眺めながら、そんなことを言った。
私を後ろから抱き締めていた湊がふっと笑った。
そして、私を抱き締める腕にぎゅっと力を込めていた。
「じゃあ、俺がこんな風になったのも、時雨の温かさのせいなのか。こんな――――」
その後の言葉は続かなかった。
すぅっという静かな寝息が、耳元で規則正しく立てられていた。
熱で朦朧としていて、ずっとぼんやりしていたのだろう。
久しぶりに湊の口から聞いた『俺』という響き。
きっと、さっきの会話なんて憶えていないだろうけれど、それでも嬉しかった。
起きた時に何か食べられるようになっているかもしれないので、布団から抜け出してご飯を作ろう。
そう想って、そっと動き出す。
その度、起きているのかと思うほど敏感に、私を抱きすくめて離さない湊。
耳元で、大丈夫だよと囁くと、少しだけ柔らかい顔になるのが嬉しかった。
やっと離してくれたのは、湊が深く眠りについて二時間以上が経っていた。
そっと湊の頬に触れる。
時折刻まれる眉間の皺が苦しそうだった。
小さく眉間にキスをして、湊のためにキッチンに向かった。