だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
新居...シンキョ
圭都の家の玄関を開けると、こちらに近付いてくる足音が聞こえた。
いつもより少し力強いその足音に、不思議に思いながら玄関でブーツを脱いでいた。
「遅かったな。何かあったか?電話にも出ないし」
圭都は心配そうな顔をして玄関まで出迎えに来てくれた。
そういえば何度も電話をくれていたのに、私は連絡を返すのさえすっかり忘れていた。
ブーツを脱いで向き合って立つ。
少し申し訳ない顔で笑っていた。
「ごめんなさい、ちょっと考え事してて。でも、もう大丈夫だから」
そう言うと圭都は少し目を伏せて笑った。
その顔がなんだか切なくて、私はそっとその頬に触れた。
近付くといつものたばこの香りが微かにする。
ほんのり冷たいその頬は、落ち着かなくて何度もたばこを吸っていたであろう圭都を想像させた。
「大分、待ってたよね?」
「ん、あぁ。まぁな」
「連絡しなくて、本当にごめん。遅くなって、ごめんね」
「いや、いいさ。待つのには慣れてるし。とりあえず上がれよ」
うん、と頷いて圭都と一緒にリビングへ向かう。
さりげなく引かれた右手に、どうしようもなくほっとした。