だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
私が使っていたテレビやオーディオなどの家電は、寝室に。
二人でゆっくりと過ごせる空間を作りたかった。
私の持っていた沢山の本たちは、まずはダンボールに入れておく。
引っ越しが終わったら、今日のうちに客間にぴったりの棚を二人で買いに行く予定だ。
「コーヒーでも、飲む?」
「そうだな。そういえば時雨、飯は?」
「今急いで食べるより、頑張ってからゆっくり食べたいな」
「わかった。じゃあ、夜は何か出前にするか」
うん、と頷いてキッチンへ向かう。
作業開始までには、まだ少し時間がある。
圭都用のコーヒーと自分用の紅茶を用意するために、お湯を沸かす。
不意にカウンター越しに圭都が私の様子を眺めていた。
いつもよりも安らいでいるその顔に、同じように柔らかく笑って見せた。
「時雨、いらっしゃい」
圭都は突然そんなことを言った。
私は、その言葉の意図がわからなくて目線で問いかけた。
そんな私を見て、圭都はふっと吹き出した。
私の反応を楽しむように、圭都は笑った。
どうしてそんなに笑っているのかわからなかったので、私はコーヒーの準備を進めていた。