だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
玄関を開けると楽しそうなおばさんの顔が見えた。
すぐに作業に取り掛かり、四時間程度で荷物は綺麗に片付いた。
てきぱきと作業を手伝う私を見て、圭都もそれを手伝ってくれた。
重いものを運ぼうとする度に、さりげなく代わってくれる圭都。
そんな私達を満足そうに見つめるおばさんに、なんだか照れくさくなってしまった。
それを見つけては圭都が肩を震わせて笑い出す。
肘で小突くやり取りが、また私達を笑わせた。
運び込まれる見慣れた家具達が、私の気持ちを少しずつ穏やかにしてくれた。
キッチンに今まで一緒に過ごしてきた家具が並び。
寝室からは、私と圭都の気配がする。
荷物だらけになった客間は、引越しの乱雑さがそのままで当分隠しておこう、と思った。
作業が終わりに近付くと、私は掃除機で部屋の中を綺麗にしていった。
圭都は床を拭きながら、時折思いついたようにベランダに立っていた。
「お荷物はこれで全部です。大体終了なのですが、大丈夫ですか?」
作業をしていた男の人が私に声をかけてくれた。
圭都がそれに気が付いて隣に来てくれる。
私は、もう大丈夫です、と言って引越し料金のお支払いを済ませた。
見積もりよりもかなり安くなっているので、圭都と顔を見合わせてしまった。