だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「あぁ。お客様がかなり手伝ってくださったので、時間が早く終わったんです。ですから、金額に間違いはありませんよ」
その男性は爽やかな笑顔でそう言った。
圭都はにやにやと私を見ているけれど、私はお構い無しにお礼を言った。
圭都が何を言いたいのか分からないが、どうせロクでもないことだろうと思って放っておいた。
領収書を受け取って、作業員の人たちを玄関まで見送る。
二人とも作業を手伝っていたので服装が少し乱れていた。
そんなことも気にならないくらい、私達は清々しい気持ちになっていた。
「本当にありがとうございました」
「いいえ。またのご利用をお待ちしております」
丁寧に頭を下げて、引越し業者の人たちは玄関を出て行った。
最後に出て行ったのは仲良く作業をしたおばさん。
終始にこにこと嬉しそうだったけれど、玄関ではなんだか眩しそうに目を細めていた。
「本当にありがとうございました。一緒に作業できて嬉しかったです」
「それは私の台詞よ。仕事一杯してくれて、助かっちゃったわ。ありがとね」
いいえ、と小さく首を振る。
なんだか名残惜しいのは、どうしてだろう。
おばさんが小さく笑って私の耳元でボソッと言った。
「素敵な彼氏じゃない。仲良くやりなさい」