だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
世話好きのおばさんらしい発言ににっこりと笑って、もう一度頭を下げた。
玄関のドアをそっと閉めると、圭都がにやにやとした顔で目の前に立っていた。
「なんでそんな顔してるの?」
怪訝な顔で圭都を見る。
圭都は何も言わずに自分の手を私の頭の上に置いた。
ぽんぽんと手のひらが乗せられる。
その振動に、私は自然と笑顔になっていった。
「まぁ、時雨らしいけど。さすがに顔が汚れてるのはどうかなぁ、と」
「・・・・・・」
えぇっ!!??
自分の頬に手を当て慌てて洗面台に向かう。
鏡に映った自分は、確かに髪の毛が乱れ頬がほこりで少し汚れていた。
にやにや顔の原因がわかったのと同時に、なんだか悔しくなってしまった。
洗面台の入り口に圭都が立っている。
意地の悪い顔のままの圭都を、鏡越しに睨みつけた。
「もっと早く言ってよ!自分じゃわかんないんだから!」
抗議の気持ちを全開に圭都に向かって言った。
くすくすと肩を震わす圭都は、私のほうへ近付いてきた。
恥ずかしいやら悔しいやらで、私はふいっと視線を逸らす。
まずは顔を洗おうと思い、目の前の棚にあるタオルに手を伸ばした。