だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
誰そ彼...タソガレ
「よし、出来た」
「・・・ありがと・・・」
手を引かれて一緒にリビングへと戻る。
無造作に洗濯機にかけたタオルは、濡れたものを洗濯物と一緒にしない私と同じやり方だった。
何も言わない圭都は、私をソファーへ座らせるとそのままテレビの方へ向かった。
今の今まで知らなかったのだけれど、実はテレビの下にはしっかりとしたオーディオセットが隠れていた。
そこにMDをセットする。
古いと言われようと、私達にとってMDはとてつもなく重要なものなのだ。
目が痛くなるほどの赤い光が圭都の横顔を照らしていた。
時折はらり落ちてくる雪が、とても懐かしい光景に見えた。
手に取ると、その塊はきっと溶け出してしまうのだろうと想った。
――――『溢れ出るものも、あんな風に固まっていけばいいのに』
あの時、湊はどんな気持ちを固めていたのだろう。
それを溶かしてあげることは、出来たのだろうか――――
「圭都」
そっと名前を呼ぶ。
夕暮れの太陽に照らされた横顔は、なんだかとても現実離れしているように見えた。
相変わらず整った綺麗な顔。
こちらを向いた圭都は、赤でもオレンジでもなく、また白でもないような光に眩しそうに目を細めた。
私はその顔を見つめ続けた。
ただ、じっと。
どうして名前を呼んだのか。
理由はわからなかった。