だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
泣き止まない私をそっと離して寝室へ向かう圭都。
何か言っていたけれど、その言葉は私の耳に届かなかった。
私は、抱き締められていたぬくもりが離れてしまったことで小さな不安に襲われた。
知らない部屋で一人ぼっち。
自分の身体を抱き締めて、小さく蹲ることしか出来なかった。
「ほら」
そう言って優しく後ろから抱き締められた。
圭都は大きめのブランケットごと私を抱え込んだ。
そして、そっと隣に座って私を自分の膝に寝かせた。
溢れる涙が圭都の膝を濡らしたけれど、今は冷たいと感じなかった。
優しい圭都の手つきに、私は意識がぼんやりとしてきた。
頭の上で私の髪の間にゆっくりと指を通す。
時折地肌に触れる圭都の指は、やっぱりひんやりとしていた。
そっと圭都の膝に手を乗せる。
懐かしい感覚が、私の涙を誘った。
「疲れたんだろ。少しゆっくりしてろ」
「あり、がと・・・」
「あぁ。お疲れ様」
優しい声がする。
その声に反応して涙の量が増す。
ただただ溢れる涙は、きっと何かの感情を含んでいるはずなのに。
流れていった感情の正体は結局、わからないままだった。