だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「時雨。それがどういうことか、わかってる?」
冷たい圭都の手には更に力が入る。
私は、泣いたせいで重たくなった瞼をしっかりと開いて答えた。
「わかってるよ。圭都を苦しめることだって、ちゃんとわかってる。それでも、一緒に行って欲しいの」
「そうじゃなくて!!!」
圭都は、大きな声を出したことに自分で驚いているみたいだ。
慌てたように取り繕って、私をじっと見つめる。
電気もつけず音楽ばかりが響くこの部屋で。
さっきまでの強い光は、ぼんやりと私達の輪郭を隠していくように弱くなっていた。
圭都の目に映る紺とオレンジの混ざった色は、圭都の瞳ごと宝石のように見えた。
「俺と一緒に暮らすってことを、言いに行くんだろう?」
当然のことを確認されて、とりあえず私は頷いた。
圭都はそれを見て更に真剣な顔つきになっていった。
「それは、いずれ俺と結婚する、って報告をしに行くのと同じことじゃないのか?いいのかよ?」
け・・・っこん。
結婚。
あぁ、そうか。
だからか。
色んなことが腑に落ちた。
そして、私は笑った。
にっこりと。
ゆっくり。