だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
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つい数時間前。
この街に着いた。
ここに来るまでの間、私は圭都の車でぐっすり眠ってしまった。
昨日の夜、色々な考えを廻らせていたせいで結局あまり眠れなかった。
少しウトウトとしていたつもりが、気付けば見慣れた街並みが見えた。
『見慣れていた』の方が正しいような気がする。
八年ぶりの地元は、少し新しい家が増えたみたいだ。
懐かしい景色に目を細めていると、少しずつ頭がすっきりしてきた。
運転席からの視線にも反応できるくらいに。
「起きたか?」
かけられた声は少しだけ心配を含んでいた。
寝起きの私に柔らかく響くように、そっと声をかけてくれる。
「・・・ごめん。ずっと寝てたみたいだね」
申し訳なくなってすぐに謝った。
実家までは大体二時間ちょっと。
その間ずっと、一人で運転させてしまった。
「気にするな。昨日、ほとんど寝てなかったんだろう?」
この人は。
簡単なことのように私のことを見抜いてしまう。
あんなにもぐっすり眠っていたはずなのに。
私が寝ていないかったことがどうしてわかったのだろう、と。
この人の思考回路を本当に不思議に思った。