だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「あんまり背中向けてばっかりだと、今度後ろから襲うからな」
「な・・・っ!!!」
顔を真っ赤にして、私は言葉を失った。
圭都は嘘か本気かわからない表情をしていた。
絶対に用心しよう、と心に決めたのは、言うまでもない。
こんな風にふざけているのは、私が緊張していることを知っているからだと思う。
私のためにしてくれていることだとはいえ、回りくどいなぁと感じることもある。
それが優しさだと知っているので、私は何も言えなかった。
真っ直ぐに『不安なのか』と聞かれたところで、正直に頷けるほど素直ではない私。
自分を誤魔化すのを許さないほど核心に触れてみたり、かと思えばとんでもなく回りくどいやり方で助けてくれたり。
どれもこれも圭都の優しさなのだと、今は知っている。
この街並みに戻ってくることが出来るなんて。
この街を出て行く時には思いもしなかった。
ただ此処から離れたかった。
ただ、遠くへ。
現実を受け止めたフリをして。
本当は、現実から逃げ出した。
平気なフリをするのは簡単で。
自分の弱いところを見せる時は核心までは見せない、と決めていた。