だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
着々と近付く八年振りの我が家。
私がそれを目に映した時、それはどんな風に見えるのだろうか。
見慣れない・・・と。
そんな風に思うことはないだろうけれど。
八年前から色を感じることが出来なくなった自分の実家は、今の私の目にどう映るのだろうか。
あんなにも色鮮やかだったのに。
今でもこんなに、想い出すことが出来るのに。
少しピントの合わないモノクロ写真のように感じるのだろうな、と考える。
そして、そのピンとを合わせることが出来るのも自分だけなのだと、ちゃんとわかっていた。
静かに圭都の車が停まる。
助手席で一度、大きく深呼吸をした。
車から降りると、道路の端に寄せられた雪があった。
この街はやっぱり雪が多いなと苦笑いが漏れる。
レンガで作られた家の門には『山本』の表札。
二階建てのシンプルな一軒家。
真っ白ではなく柔らかい白色をした壁に、木目の茶色の壁を組み合わせてある。
外観がおしゃれで私はとても好きだった。
門の前から家を見上げる。
目に映る実家は、私の気持ちを懐かしくさせた。
それと同時に、私が住んでいた時の鮮やかさを感じないことに心が沈んだ。
どこか物悲しい。
どこか寂しい。