だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
ガレージにお父さんの車がなく、家からも人の気配がしなかった。
今日は二人とも日勤のようだ。
うちにはガレージの他に、二台分の車のスペースがある。
ガレージの中はお父さんの車。
玄関前のスペースには、湊の車。
今はもう、湊の車はない。
私専用の助手席があったその車は、随分前に手放してしまった。
「圭都。車、玄関前に置いてくれる?このスペース使っていいから」
「わかった。今移動する」
助手席の窓を叩いて圭都に伝えると、駐車するために車を動かしてくれた。
私はその様子を横目に、もう一度家を見上げた。
大丈夫。
変わってない。
そう、ゆっくり受け止めようとしていた。
圭都のシルバーの車は、湊が使っていたスペースにぴったりと収まった。
ずっと其処にあったかのように。
湊が帰ってきたような感覚になって、そっと目を逸らしてしまった
運転席から降りた圭都は、何も言わずに私の横に並んだ。
目の前の家は、どんな風に圭都の目に映っているのだろう。
「懐かしいな」
圭都はぽつり、とそう言った。
懐かしい。
その響きは、私の胸の中をずしりと重くした。
理由は分からなかった。