だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「だって、時雨と一緒に寝たいんだよ」
湊の言葉は拗ねた子供のようだった。
いつもは言わないようなそんな声で、私に可愛いことを言わないで。
何でもしてあげたくなってしまうから。
湊は本当に性質が悪いと思う。
「時雨がずっといてくれるなら、ここでもいい。でも、そうじゃないだろう?夜とか、朝とか、ご飯の時とか。時雨と一緒がいいんだよ」
湊は信じられないくらい甘えん坊になっていた。
こんな湊を見たのは、後にも先にもこの時だけ。
いつも大人で冷静な湊が、自分の欲望のままに私に告げる。
初めて見る湊の姿にときめいてしまったのもまた、事実だった。
顔がどんどん赤くなるのがわかる。
それを見て湊は、ここぞとばかりに私におねだりをしてきた。
ベッドから私を手招きする。
そんな誘惑に逆らえるわけがなくて、私はベッドの傍に立つ。
すると湊は私をベッドに引き込んでしまった。
リクライニングで寝ているのと座っている中間の状態。
そんな状態で私を引き込んで、私を胸の中にすっぽり抱えてしまった。
いつもより少し熱い体温が、私の肌を包んでいる。
胸の鼓動が、私の耳元で聴こえた。