だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「こうして一緒に寝たいんだよ。時雨を抱き締めているほうが、安心して眠れる」


「でも・・・」


「時雨は嫌なの?僕と一緒に寝たくないの?」


「そんなことっ!一緒にいたいよ!だからこうして、毎日・・・」


「なら、一緒に帰ろう。僕と時雨が、一番長く時間を過ごした場所に。二人が一緒にいてもいいのだと、認めてもらった場所に」





湊は狡い。

私が湊に帰って来て欲しい、と。

そう想っていることをわかっていて、こんなことを言ったに違いない。



湊が入院してから、私は一度も『寂しい』と言わなかった。

それだけなら、ただの我慢だと思ったかもしれないけれど。

決定的なのは昨日この病室に泊まったことだ。

別々のベッドでも私が安心してぐっすり眠ったことで、湊は気が付いたのだろう。




私が、一人で眠れていないことを。





湊が私の些細な変化に気が付くのは、私のことを気にしてくれているのだと想えて嬉しい。

けれど、こんな時にまで心配をかけてしまう自分の不甲斐無さが、今は少し悔しい。




「でも、きっとお父さんは反対するよ」




お父さんは私に甘いし、とても優しい。

でも仕事に関しては違う。

自分に出来る限りのことをする、と。

そう想っているお父さんが、湊に簡単に外出許可をくれるとは思えなかった。




< 251 / 358 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop