だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「こうして一緒に寝たいんだよ。時雨を抱き締めているほうが、安心して眠れる」
「でも・・・」
「時雨は嫌なの?僕と一緒に寝たくないの?」
「そんなことっ!一緒にいたいよ!だからこうして、毎日・・・」
「なら、一緒に帰ろう。僕と時雨が、一番長く時間を過ごした場所に。二人が一緒にいてもいいのだと、認めてもらった場所に」
湊は狡い。
私が湊に帰って来て欲しい、と。
そう想っていることをわかっていて、こんなことを言ったに違いない。
湊が入院してから、私は一度も『寂しい』と言わなかった。
それだけなら、ただの我慢だと思ったかもしれないけれど。
決定的なのは昨日この病室に泊まったことだ。
別々のベッドでも私が安心してぐっすり眠ったことで、湊は気が付いたのだろう。
私が、一人で眠れていないことを。
湊が私の些細な変化に気が付くのは、私のことを気にしてくれているのだと想えて嬉しい。
けれど、こんな時にまで心配をかけてしまう自分の不甲斐無さが、今は少し悔しい。
「でも、きっとお父さんは反対するよ」
お父さんは私に甘いし、とても優しい。
でも仕事に関しては違う。
自分に出来る限りのことをする、と。
そう想っているお父さんが、湊に簡単に外出許可をくれるとは思えなかった。