だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「それは・・・そうかもね。じゃあ僕が直接お願いするよ。だから、お父さんを呼んできてくれる?」
湊はそう言って私の頭にキスをした。
顔が見えなくても湊の声が張り詰めた気がして、私は少し不安になった。
湊の背中にまわした手に力が入る。
私は、湊が此処にいることをしっかりと確かめた。
「わかった。でも反対されたら、きちんという事を聞いてね」
「時雨のお願いなら仕方ないね。わかった、約束する」
そう言って私の頭をゆっくりと撫でる。
その手はとても優しくて、私を安心させようとしているのが伝わってきた。
それと同時に、なんとも言えない不安が広がったけれど、それを湊に感じさせてはいけない気がした。
そっと身体を離して、湊の顔を見つめる。
湊はいつにも増して穏やかな顔をしていた。
久しぶりに仕事のことを考えずにいられる時間を、ゆっくりと過ごしているからかもしれない。
「じゃあ、今からお父さんのところに行って来るね。時間作ってもらうから、ちゃんと話して」
「ありがとう、時雨」
湊は私の瞼にそっとキスをした。
応えるように私は、湊の頬にキスを返した。