だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「そんなに不安になることはない。お父さんも美佳もついてる。何より、時雨が湊を心配していることが、湊にとっては一番の薬なんだ」
「私・・・何も出来ないのに?」
「湊は、時雨がいればゆっくり眠れると言ってた。今の湊に必要なのは、ゆっくり休めることなんだよ。それが出来るのは、時雨しかいないんだ」
お父さんの言葉は、私を非道く安心させた。
堪えていた涙を押し込むことが出来なくて、私は声も出さずに泣いた。
今声を上げてしまえば、きっと湊が気付いてしまう。
さっき、ここに来る時。
一番奥の病室の扉が空いた気配がした。
湊は、この診察室のドアを開ければそこにいる。
そんな気がしていた。
「時雨。心配をして泣くのは、いけないことじゃない。不安になれば泣けばいい。辛いことがあれば喚けばいい。時雨が我慢していると、お父さんもママも、そして湊も。みんな苦しくなる。同じように辛くなるんだよ」
お父さんの声は、湊よりも私を心配している声だった。
我慢には慣れている。
少しでも負担になりたくなくて、色んな感情を抑えていた。
誰かのために、何かしたくて。
自分の感情を後回しにすることが辛いだなんて思ったことは、一度もなかった。