だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
でも、わかった。
あぁ。
私、辛かったんだ。
怖かったんだ。
湊がいなくなりそうで。
湊に何かあったら、って。
一人で眠ることも。
一人でご飯を食べるのも。
湊に触れない日々も。
ずっと、辛かったよ。
怖かったよ。
我慢するのは耐えられないと、気付いた。
しばらく唇を噛み締めたまま、ぽろぽろと涙を流していた。
お父さんが近くのティッシュの箱を渡してくれて、私はそれを抱えていた。
やれやれ、とお父さんがため息をついて、そのまま静かに頭を撫でてくれた。
その度に、今までにない程その手に甘えていた。
こうして甘える場所があったことに、こんな時にしか気付けないなんて。
いつも甘やかされていて。
いつも居場所を用意してくれていたのに。
それを拒んで強がることで、大人になったフリをしていた。
本当は誰よりも寄りかかれる場所を探していたのに。
不安をかき消すように、お父さんは『大丈夫』と、そればかりを繰り返していた。
私はその言葉に頷くばかりで、何も言葉を伝えることが出来なかった。
思いっ切り泣いてすっきりした私は、お父さんに小さく謝った。
すると、お父さんは『たまにはしおらしい時雨もいいな』と笑ってくれた。