だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
温度...オンド
『今年の年末は、二人で過ごそうか』
湊はとても軽い口調で私に言った。
夜を一緒に寝始めて一ヶ月。
お父さんもママも、私が湊の部屋にいることに何も違和感を感じなくなっていた。
寝る準備をして二人でベッドに並んで座っていると、突然そんなことを言った。
「・・・え?」
「年越し、どこかに旅行をして二人きりで過ごそうかってこと」
また軽い響きで湊が言った。
けれど私は唖然として、何も言葉を発することが出来なかった。
「時雨、どうかしたの?」
心配そうに湊が私を覗き込む。
私は、その顔にやっと思考が働き出した。
もちろん湊と二人きりで、なんてとても嬉しい。
けれど年越しなんてホテルは混んでいるだろうし、お父さんたちは私たちが家で過ごすと思っている。
こんなに急に行けるとは思えなかった。
だって、今日はもう十二月二十九日。
年越しを過ごすのは後二日後なのだ。
「ちょっと待って・・・。嬉しいけど今からじゃホテルも取れないし、お父さんたちだって・・・」
おろおろとしている私に向かって、湊は満面の笑みをしていた。
その顔を見て私は気付いてしまった。