だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「時雨も、僕に安心をくれていたんだよ」
嬉しいという気持ちを込めた湊の声が聞こえた。
私の背中をそっと押して、二人でリビングのソファーに腰掛ける。
リビングにも甘いココアの匂いが立ち込めた。
「時雨が僕の傍で眠る姿。僕に心を許してくれている、その様子が。傍にいてもいい、と言われているようで嬉しかった」
懐かしむように目を細める。
ことん、とカップをテーブルに置いて、私をそっと抱き寄せる。
カップを持ったままの私は、中身をこぼさないように気を付けながら自分のカップを置いた。
「その時から、僕の居場所は時雨の隣になったんだ」
私の隣に。
気が付くと其処に、確かに湊はいてくれた。
本当の兄妹よりも仲良く見えたのだろう。
私は湊が大好きで。
湊も私をいつも傍にいさせてくれた。
それは、どんなに時間が過ぎても変わらなかった。
そして今も此処にいてくれる。
当たり前のことが、本当はとてつもなく大変なことだ、と。
今ならわかる。
今になって気が付くなんて、私はどれだけ湊に甘えていたのだろうと想った。