だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「甘えてばかりで、ごめ―――――」
『ごめんね』という言葉がそこに続くはずだったのに、私はその言葉を伝えることが出来なかった。
湊はそっと私の頬に手を当てて、優しくキスをくれた。
ついばむように繰り返されるその柔さに、私は思考回路を遮断されてしまった。
「今『ごめんね』って想ったでしょ?」
湊は私の考えを見抜くと、おでこをくっつけて笑った。
そのまま目を合わせて、小さくうなずくことしか出来なかった。
今、湊の言葉に逆らうことは絶対に出来ないと想った。
「そう想うなら、やめて欲しいことがあるんだけど」
湊はそう言って少し真剣な目を私に向けた。
私は何を言われるのか怯えながら、小さく目を揺らしていた。
私の頬に少し冷たい手が触れる。
その手がとてもいとしそうに私の頬に触れるので、なんだか泣きそうになってしまった。
「何?言って。湊が嫌だと想うことは、もうしないから」
湊の背中に回した手にぎゅっと力を込めた。
握り締めた手には、湊の服がしっかりと掴まれていた。