だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「俺以外の男の前で、泣くな」
その声は、ぐっと響く低い声だった。
湊が『俺』と言う時は、理性で抑えることが出来ない時。
感情が滲み出ている証拠だった。
「それって・・・」
「昨日、お父さんの前で泣いただろう?気付かないとでも想った?」
「でも、男ってお父さんでしょ?」
「でも、男だろ?」
真剣に言う湊を見て、私は思わず笑った。
だって、お父さんに対して『男』だなんて。
可笑しくなって笑う私に、湊は真剣な表情のまま頬の手に力を込めた。
そして、笑う私の口をそのまま強い力で塞いでしまった。
「――――――っ!」
湊の力に逆らうことが出来なくて、私はそのままソファーに押し倒された。
押し付けられた力はあまりに強く、湊がふざけているのではないとすぐにわかった。
湊の両手が私の両頬を押さえつける。
私の両手は、湊の背中にしがみついている。
息が苦しくて逃げようとする度、湊はその抵抗を許さないように、私にしっかりと体重をかけてきた。
私が何かを言おうとすると『黙って』と強い口調で私を制する。
非道く傷付いた声が聴こえて、私は湊の動きに合わせるしかなかった。