だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「頼むから。場所くらい俺が持ってる。此処にあるじゃないか」
悲痛な声が、私の心臓をえぐる。
湊は、こんなにも私のことを見ていてくれた。
そして、私のことをこんなにも心配してくれた。
私はこの胸に縋ってばかりで。
その甘えを、自分で許せなかった。
それでも、私が縋らないで泣くことのほうが辛いと、湊は言った。
縋っていい、と言ってくれた。
「怖い。・・・湊がいなくなるのが、怖いよ」
「いなくなったりしないよ」
「でも『もしも』湊がいなくなったら。私・・・何に縋ればいいの?」
「時雨・・・」
「自分でなんとかしなくちゃって、一人でも頑張らなくちゃ、って。我慢もするし、辛いことも表に出したりしちゃ駄目なんだ、って想って。一人で泣いて、何とかしなくちゃって。でも怖くて・・・どうすれば――――」
言葉が詰まった。
何も言えなくなった。
それは、湊が私を強く抱き締めたからだと気付いた。
そのことを理解するまで、かなり時間がかかったけれど。
私の背中に回った手が震えてる。
私の頬に触れる髪の毛が揺れている。
私の鼓動と混ざる湊の心臓の音が、私の身体に響いてくる。
怖いよ。
湊。