だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「頼むから。場所くらい俺が持ってる。此処にあるじゃないか」




悲痛な声が、私の心臓をえぐる。


湊は、こんなにも私のことを見ていてくれた。

そして、私のことをこんなにも心配してくれた。


私はこの胸に縋ってばかりで。

その甘えを、自分で許せなかった。

それでも、私が縋らないで泣くことのほうが辛いと、湊は言った。


縋っていい、と言ってくれた。




「怖い。・・・湊がいなくなるのが、怖いよ」


「いなくなったりしないよ」


「でも『もしも』湊がいなくなったら。私・・・何に縋ればいいの?」


「時雨・・・」


「自分でなんとかしなくちゃって、一人でも頑張らなくちゃ、って。我慢もするし、辛いことも表に出したりしちゃ駄目なんだ、って想って。一人で泣いて、何とかしなくちゃって。でも怖くて・・・どうすれば――――」




言葉が詰まった。

何も言えなくなった。

それは、湊が私を強く抱き締めたからだと気付いた。

そのことを理解するまで、かなり時間がかかったけれど。



私の背中に回った手が震えてる。

私の頬に触れる髪の毛が揺れている。

私の鼓動と混ざる湊の心臓の音が、私の身体に響いてくる。




怖いよ。

湊。




< 266 / 358 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop