だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「それまで想う存分甘えていいから。俺以外に縋らないでくれ」
そのまま、私が返事をする前にもう一度キスをくれた。
さっきとは違う、優しいやり方で。
私の涙を誘うばかりだけれど、何度も何度も重ねられた唇は湊と私の境目を見失いないそうだった。
雨の音とココアの匂い。
私と湊を包むもの。
不安は、まだある。
怖さも、まだある。
けれど、それも全て湊と一緒にいるから生まれる気持ちなのだ、と知った。
私は、安心しきって泣いた。
今、此処で。
私がしがみついているのが、紛れもなく湊であること。
胸に響く鼓動が本物であること。
涙を拭う指がとても優しいこと。
今、生きているということ。
私は、ソファーの上で湊に抱かれたまま眠った。
湊も安心しきった寝息を立てていた。
本当はもっと顔を見ていたかったのに湊が私の瞼にばかりキスを落とすので、目を開けていられなかった。
向かい合っていたはずの体勢は、いつの間にか後ろから抱きかかえられるようになっていた。
耳元に聴こえる湊の呼吸にとても安心して、私はもう一度眠りについた。