だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
夜になるとお父さんとママが揃って帰ってきた。
久しぶりに四人で囲んだ食卓は、とても幸せなものに想えた。
みんなで飲んだお酒はとても美味しくて、私達はみんなで笑っていた。
私はこっそり用意していたデジカメを、そっと湊に向けた。
気付いた湊は私の手からデジカメを持ち上げて、肩を抱き寄せてシャッターを押した。
信じられないくらい幸せそうな湊の顔。
後にも先にも、この一枚だけ。
湊の本当の笑顔だった。
私の少し腫れた瞼について、お父さんもママも何も言わなかった。
こんな些細なことでも私は甘やかされていたのだ、と実感するばかりだった。
夜が更ける。
私の部屋のベッドの中で。
此処には、二人きり。
静かな雨の音がしていた。
「静かだね」
「うん、とても」
湊が耳を澄ましているのがわかる。
私はそれを邪魔しないように、そっと頷く。
「でも、もうすぐ止みそうだ」
雨の音を聴いて湊はそう言った。
湿度の気配も、空気の匂いも。
まだ雨が続きそうなのに。
「雨は止むよ。明日が晴れるために、雨は必ず止む。どんなものにも終わりがあるから」
私を後ろから抱えたまま、どこか現実離れした声が響いていた。
私の心はざわついて。
ひどく、怯えた。