だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「夜上がり。夜明けがくるように、夜の間に静かに雨が止むこと。明日が来ることを教えてくれる、そんな雨」




ヨアガリ。

雨は止む。

明日が来るから。




「時雨の悲しみや不安が、少しでもなくなればいい。そして明日の朝に、笑ってくれればいい。」




湊の腕が、私の体の一部のように感じる。

同じ体温を分け合う私達は、それでも別々のものなのだとゆっくり理解する。



離れられないけれど。

離れてしまいそう。




「湊がいれば、いつだって笑える。夜の間に、全てを受け止めてくれる。そうすれば、何度でも頑張れるよ」




湊は私の頭に自分の顔を埋めて、私にすり寄せた。

その仕草に胸が詰まって、どうしようもなくなって。

窓を向いていた身体を湊に向ける。



目が合った湊は、とても儚くて今にも消えてしまいそうだった。

必死にしがみついて『此処にいて欲しい』と願った。

同じ力で抱き締めてくれる湊の腕は、紛れもなく此処にある。



私は、不安を表情に浮かべて湊を見つめた。

色素の薄い目は、それすら受け入れるように笑った。




雨の止む音を聴きながら、私達はそっとキスをした。

湊が幸せそうな声で、私に『愛してる』と呟いた。




消え入りそうな声を、いつまでも抱き締めて目を閉じた。




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