だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「ねぇ。折角だから二階に行ってみる?ママたちはまだ帰って来ないと思うから」




時間はまだ十六時。

お父さん達は多分十九時くらいにならないと帰ってこないだろう。

二人でリビングにいてもいいのだけれど、圭都には見せてあげたかった。


あの日のままの、湊の部屋を。


いや、私が見たかったのかもしれない。

湊の気配のする、湊の部屋を。

湊を感じたいと想っても、一人で其処に入る勇気がなくて。

結局、圭都に甘えて巻き込んでいる。



そんなことを全く気にしないように、圭都は笑った。

むしろとても嬉しそうな顔をしていたので、私はほっとした。




「いいな。時雨の家を色々見てみたい。湊の部屋も、時雨の部屋も」




圭都は子供のように顔いっぱいで笑っていた。

無邪気に笑う圭都は、いつもよりもずっと幼く見えた。




「圭都、どうしてそんなに嬉しそうに笑ってるの?」




いつもとは違う圭都を見て感じた違和感を口にする。

その表情を作っているのか、それとも心から嬉しく想ってくれているのか。


私はいつもより鈍った感覚のせいで、それを見極めることが出来なかった。




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