だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「じゃあ、行こうか」
立ち上がって圭都の肩にぽん、と手を乗せる。
触れた圭都の肩は見た目よりもしっかりとしていて、細身の体からは想像もつかないほど逞しい。
立ち上がった時の目線は私よりも高く、ヒールを履いていない家の中ではしっかりと見上げないといけなかった。
「行ってみたいな。二階なのか?」
「そう。私達の部屋は並んでるから」
静かにリビングのドアを開けて、懐かしい階段を私が先に上る。
木目のしっかりした階段は下から五段目がやけに軋む。
その音で、誰かが下から来るのを確認することが出来るほどだ。
私はこの音が大好きだった。
確かに此処にある音が、この家で生活していた証のようのな気がした。
階段を上ると真っ直ぐ正面に私の部屋がある。
左隣が湊の部屋。
右側の一番奥に物置兼物干し部屋がある。
私は少し迷って、湊の部屋の前に立つ。
茶色い扉は銀色のノブがついている。
部屋の前でそのドアを眺めていると、隣に圭都が並んで立った。
「湊の部屋?」
その声の主に顔を上げて、目線を合わせて頷く。
私は、笑った。