だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
そっと、目の前のキャンドルを手に取る。
出窓には十六個のキャンドルが並んでいる。
「湊からのプレゼント」
「時雨に?」
「そう。大切にしてたんだ」
私が手に取ったのは真っ白なキャンドル。
ガラスのキャンドルホルダーに入れられたそれは、使い始めのような溶け方でホルダーの中に納まっていた。
「私の誕生日の度に湊がくれたの。好きだったんだ、とても」
毎年。
一月一日には、キャンドルが増えていった。
白。
薄い黄色。
ピンク。
淡いオレンジ。
少しずつ濃くなっていくその色は、私の色だ、と湊は言っていた。
――――『時雨の色は、透明なんだけどね』――――
目を細めて呟いた言葉を想い出した。
『透明だから何色にでもなれる』と言ってくれたことを。
「使ってるのは少ししかないな」
私が手に持っているキャンドルを見て、不思議そうに圭都は言った。
他のキャンドルを手にとって、まだ包装されたままのそれを見つめる。
「なんか、使えなかったの。もったいなくて」
「なるほど。時雨らしいな。じゃあ、それは?」
私の手元を指差して圭都は聞いた。
このキャンドルは誰がつけたのか、と。
それは、きっと――――――。