だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
かたんと音を立てて、木製の箱を取り出す。
手で彫られたような模様のついたそれは、お母さんが生きている時に大切にしていた宝石入れだ。
「その入れ物は?」
圭都が興味深々に見つめる。
趣のある古い箱は、圭都の目にも留まる物のようだ。
「お母さんの形見。私はほとんど記憶がないけど、コレを大切にしていたのだけは憶えてるんだ」
大切にそれを撫でて蓋を開ける。
そこに入っているはずのものは、何も入っていなかった。
入っていたのは、鍵。
華奢な鍵。
金色の綺麗な作為が施されている。
真ん中には赤い綺麗な宝石。
小さいので、ガラスのように見える。
色つきのガラス玉?
「それだけか?入ってるもの」
「・・・違う」
「え?」
「これ、・・・私のものじゃない。この鍵は・・・」
「綺麗な鍵だな」
圭都のその声にがばり、と顔を上げる。
圭都の声が湊の声と重なる。
急に顔を上げた私に、圭都が驚いたように目を見開いていた。
「――――――湊――――――」
私が圭都を見たままそう言ったので、圭都は少し目の中を揺らした。
その顔を見て我に返る。
そして、慌てて圭都の手を掴んだ。