だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
箱の中には、二人で撮った写真を詰め込んだ。
最初は私の箱の中に入れていたのだけれど、いつしか入りきらない量になっていたから。
だから二人で、湊の箱の中に詰め込んだのだ。
雨とか。
湊のプレゼントの服を着た私とか。
夕暮れの函館とか。
朝焼けの洞爺湖とか。
最後の夜も。
記憶が蘇える。
でもどうしても想い出せない。
何処にその箱を置いたのか。
その箱を最後に触ったのは、いつのことだったのか。
「その箱は、今何処に?」
圭都は優しく私に言った。
遠い記憶を呼び覚まそうとしている私は、その声に向かって力なく首を振った。
「わからないの」
わからないの。
湊がいなくなる前に、その箱に触れたのか。
それとも、湊がいなくなってからその箱を遠ざけたのか。
私には何も分からなかった。
断片的に想い出す記憶の中に湊の箱を想い出すということは、湊がいなくなってからのことなのかもしれない。
けれど確信など持つことは出来なかった。
今それを見つけるためには。
部屋中をひっくり返して隅々まで探すことしか手段がないのかもしれない。
「その箱を、湊は大切にしてたのか?」
「うん、とても」
「じゃあ探そうぜ」
「圭都、手伝ってくれる?」
遠慮がちに言った私の言葉に『もちろん』と嬉しそうに笑ってくれたことが、とても有り難かった。