だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
まずは、私の部屋から。
狭いこの部屋の中でも隠し場所は沢山ある。
もし湊がいなくなってしまった後なら。
他の部屋に持ち出すほどの余裕が、当時の自分にあったとは思えなかった。
クローゼットも、机も、箪笥も、ベッドの下も。
ありとあらゆる場所を探した。
思いつく限り、全て。
おかげでさっきまで可愛らしい空間だった私の部屋は、見事なまでに荒れ放題だった。
私しかしらないドレッサーの椅子の中とか、そういった場所も全て探したけれど、それが見つかることはなかった。
「ここじゃないのかも」
「そうだな。これだけ荒らして見つからないなら、ここじゃないだろうな」
圭都は苦笑いを浮かべながら、何となく物を片付けていた。
私はそれを見ると、とても申し訳ない気持ちになった。
私だってこんなに荒れ放題の部屋にいるのはいたたまれなかったけれど、今は片付ける元気はなかった。
自分の気持ちが自分のものでないように焦っているみたいだった。
少しでも早く湊の箱を見つけたかったから。
「ここじゃないなら、残る場所は一つだろう」
圭都はやっぱりな、という顔をして私を見ていた。
物が散乱した中に座る圭都を見て、少し不安な表情を返してしまった。