だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「我慢を、させてたんだね。ごめん」
少しだけ悲しそうな響きをした声が聴こえた。
私は声を出さずに、首を横に振った。
「だから、新しい年を一緒に迎えよう。二人きりで」
二人きりで。
新しい年を。
「今年が終わる時に一緒にいようよ」
「・・・湊」
「『終わりが連れてくる始まり』。年末をそう表現した人がいたな」
「お仕事?」
「そう。とてもいい響きだと想ったんだ。それを、二人で見たいんだ」
終わりが連れてくる始まり。
それはきっと、どこか切なくて懐かしい景色なのだろう、と想う。
湊が『いとしい』と想う景色。
「楽しみにしてるね」
そう言うと、嬉しそうに笑った。
いつも私のことを考えてくれている。
仕事が忙しくても、夜はいつも一緒にいてくれる。
そのぬくもりがあるだけで、何だって出来る気がした。
私が心から安らげる場所。
湊の腕の中は、優しさと幸せで満ち溢れた場所だった。
「一緒にいられなかったクリスマスの分も、ゆっくり過ごそう」
うん、と頷いて二人でベッドにもぐり込む。
冷たい布団の中で、互いの体温を求めるように抱き締めあった。
動くたびに布団の冷たさと湊の温かさに触れる。
その温度に安心して、私はすぐに眠りについた。