だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「湊の・・・部屋」
「そう。そこしかないだろう、間違いなく」
圭都は最初からわかっていたかのように落ち着いていた。
そして、静かに立ち上がった。
「でも、お前。湊の部屋を探すのが嫌なんだろう?」
この人は。
私がどんなに取り繕っても、それを見抜いてしまう。
意地悪な顔をしてくれれば反論も出来るのに、こういう時に限って真面目な顔をする。
その顔が、私を追い詰めることを知っているくせに。
「湊の部屋は、きっと湊が生きていた頃のままなんだろう?その部屋を探せば、必然と湊の気配は薄まる。お前は、それをしたくない。違うか?」
「・・・違わないよ」
それがわかっているなら。
探させないでくれればいいのに。
圭都は私を見つめたまま、少しの間そのまま立っていた。
そして、何も言わずに私の部屋のドアに手をかけた。
「その鍵が、何なのかは俺にはわからない」
静かな声。
低く感情を抑えつける、そんな声。
「でも、それはきっと湊にとって特別だったはずだ。それなら、その箱の中身は、時雨と湊にとってかけがえのない物に違いないだろう?」
圭都の声が一気に優しくなった。
その声に、私はそっと圭都の背中を見つめる。