だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
圭都は、湊のベッドの引き出しの奥を叩いた。
湊のベッドは下が物を入れられるようになっているが、引き出しの奥行きがベッドと同じではないことに気が付いたのだ。
「ここ以外には、もう隠せないだろうな」
そ圭都は布団を引きずり下ろし、引き出しを取り出してベッドを持ち上げた。
そこには、綺麗な飾り彫りが施された、鍵のついた箱が置かれていた。
「ほらな」
「・・・ねぇ」
嬉しそうな圭都とは裏腹に、私は腑に落ちないことだらけだった。
圭都は私を見つめて小さな箱を手渡した。
受け取ったその箱は冷たく、湊の手のような感覚がした。
「時雨」
「・・・何?」
「最後の夜、どっちの部屋にいた?」
「え?」
「最後の夜。湊の部屋と時雨の部屋、どっちで寝た?」
「・・・私の部屋」
圭都は不安げに言う私に向かって、にっこりと笑った。
質問の意図が分からず、私は何も答えることが出来なかった。
「普段は湊の部屋で寝てたんじゃないのか?」
「―――!何で、わかるの?」
「わかるさ。お前がこの部屋を大事にしてるのを見てれば」
そんなことまで見抜かなくてもいいのに。
圭都は私のことなら何でもお見通しなのでは、と少し呆れた溜息が漏れた。