だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
時雨
思案...シアン
「今年も本当にお世話になりました。はい、来年もどうぞ宜しくお願い致します。すぐにお会いすることになるとは思いますが――――」
夕方のオフィス。
もう外は暗くなっていて、冬であることを教えてくれる。
あちらこちらで仕事の電話が入る度に年末の挨拶をしている。
今年の営業もあと二日。
といっても、うちは元旦プロジェクトがあるためギリギリまで仕事をすることになる。
松山と篠木は休んで構わない、と部長から言われていた。
しかし、松山は仕事をする気満々だ。
「お前たち、年末休みなんて最初の頃に取っておかないとなかなか取れなくなるぞ」
圭都は呆れたように二人に向かって言う。
自分は山積みの仕事に囲まれながら言うその姿に、なんだか可笑しくなった。
みんなはコーヒーを、私はココアを飲みながら、少しのんびりした空気が流れている。
「確かにクライアントの少ない今しか休めないかもしれないですけど、色々見ておきたいんですよ。今は仕事が楽しいんですから」
松山が顔を綻ばせてそう言った。
いつからこんなに仕事熱心になっただろう、と感心してしまう。