だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「あー、でも俺食べたい物があるんだけど」
そう言って私の方を見る圭都に目だけで『何?』と問いかける。
コンロにはお味噌汁用の片手鍋を用意していた。
「時雨の卵焼き、食べたいな」
圭都は私の卵焼きがとても好きなのだ。
だしの味とお砂糖を入れた甘い卵焼き。
誰でも作れるよ、と教えてあげたことがあるのだが、圭都は『自分で作っても美味しくない』と言っていた。
「卵焼き?じゃあ、それだけは私が作ろうか」
「頼むな」
そう言って、手元の洗い物を片付けていった。
時間は十九時。
もうすぐお父さんもママも帰ってくるだろう。
キッチンにあった勤務表は二人とも日勤になっている。
みんなでゆっくりご飯を食べられるかどうかはわからないけれど、みんなでテーブルを囲めることを祈って私達は料理を作った。
圭都が作ってくれた料理は、一つずつに盛り付けるようなものが一つもない。
みんなで箸を伸ばせるような料理ばかり作ってくれた気持ちが、とても嬉しかった。
ダイニングテーブルに料理を並べる。
温かいものは食べる直前まで鍋に入れたままだ。
二人で準備をして、一息つく。
並んだまま、キッチンからリビングを眺めていた。