だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
――――――ガチャッ。ガタガタンッ――――――
なんだか大きな音がしたことで、二人が帰ってきたのが分かったた。
圭都と目線を合わせて一人で玄関に続くリビングのドアに向かう。
それと同時にドアが勢いよく開いて、ママが私を見つけて抱きついた。
私よりも小さなママが私の首にしがみつくので、少し前屈みになってしまった。
「時雨ちゃんっっ!まさか帰ってきてくれるなんて思わなくて!・・・あぁ、もう。本当に嬉しいわ・・・」
「ママ・・・。心配かけて、ごめんね」
ぎゅっとママを抱き締める。
小さな体のママは、また少し小さくなってしまった気がする。
心配をかけている。
ママに触れた腕が、そのことを実感してしまった。
「ただいま」
「おかえりなさい。長い家出だったわね」
ふふふ、とママは笑った。
ごめんと小さく言って、私も笑った。
「おかえり、時雨」
「ただいま、お父さん」
静かな足取りでリビングに入ってきたお父さんは、私を見て嬉しそうに笑った。
そして、その目線はダイニングテーブルの横に立っている圭都へと注がれた。
圭都はお父さんと目を合わせて綺麗にお辞儀をした。
言葉を発することなくお辞儀をした圭都。
その礼は、見たこともないほど綺麗な礼だった。