だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「一緒に暮らそうと想ってるんだ」
お父さんとママに向かって報告をする。
今は何の迷いもない。
湊がくれた『希望』。
私達二人で、大切にしていけるはずだから。
「・・・サクライさん、と言ったわね」
「はい」
圭都はしっかりと言葉を放つ。
圭都の左手が驚くほど冷たいので、私はしっかりと握り締めた。
お父さんは圭都をじっと見つめて、そして息を呑んだ。
その音は私達にも聴こえた。
「・・・湊、に良く似てる」
お父さんがぼそりと放った言葉に、圭都が反応した。
小さく震える手が不安にならないように祈るばかりだった。
お父さんの横でママは笑った。
ふふっと、どこか諦めを含んだ声で。
私は、ママのそんな笑い声を聞くのが初めてで、どうしようもなく怖くなった。
「『櫻井』の姓を名乗っているのね。『柴田』の姓を名乗っているのかと思ってたんだけど」
圭都があからさまに動揺した。
私は会話の内容が上手くつかめなかった。
ママの事情を知っているお父さんは、ママと圭都の顔を交互に見つめて静かに目を閉じた。
「本当にそっくりね。でも、どことなく彼女にも似てるわね」