だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「そうか。僕としては、何も問題がないんだけどね」
そう言って穏やかな笑みをたたえる。
けれど、すぐに苦しそうな顔をしてママを見つめる。
ママは瞬きもせず圭都を見つめていた。
「私は反対です」
ママはきっぱりと言った。
何一つ迷いのない声で。
その声に、圭都は動揺しなかった。
わかっていたのだろう。
そんなことくらい覚悟の上だ、と圭都の気配が言っている。
「あなたに会う日が来るなんて、思いもしなかったわ」
「私も、同じ気持ちです。お会い出来る立場でないのも、十分に理解しています」
私は何も言えなかった。
お父さんも何も言わなかった。
これはきっと、圭都とママの問題だから。
私達親子が口を挟んではいけないのだろう、とわかっていた。
「それでも、お会いしたいと思いました」
「そう・・・。お母さんは、お元気?」
圭都の言葉に何の感情も感じないようにママは言った。
その言葉はどこか冷たく、私は背中が冷えるのを感じた。
圭都は動揺しながらも『はい』と小さく答えていた。