だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「そう。ご自身の出生については、どこまで知ってるのかしら?」




ママの声はどんどん冷たくなっていった。

そんなことより、ママが圭都の存在を知っていたことに私は驚いていた。

もっと取り乱すのかと思っていたけれど、それとはむしろ逆。


冷静に。

いや、冷たくママは佇んでいた。




「どこまで、と言いますと?」


「貴方が知っていることを、教えてもらえれば十分だわ」


「はい。自分が妾腹だということは、知っています。母が、あなたをとても苦しめたことも。不倫で自分が生まれたことも」


「そう・・・。不倫だ、と」


「はい。母からはそう聞いています」




圭都の言葉に、ママは冷たく笑った。

乾いた笑い声。

ママの顔には嫉妬よりも憎悪が浮かんでいるようだった。


純粋に怖かった。

杉本さんの目と、あまりにも似たママが。




「不倫、ねぇ。それは正しい表現ではないわ」


「え?」


「不倫・・・なんて、一言で片付けられるほど、綺麗なものなんかじゃないわ」




ぞっとするほどの暗い声。

ママが遠い記憶を呼び起こしている。


圭都はそんなママから目を離すことはなかった。




「お母さんは、圭子(ケイコ)さんとおっしゃったわよね?櫻井圭子さん」


「はい」


「私は、一度しかお会いしたことがないの。快斗の亡くなった時に、一度だけ」





< 308 / 358 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop