だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「そう。ご自身の出生については、どこまで知ってるのかしら?」
ママの声はどんどん冷たくなっていった。
そんなことより、ママが圭都の存在を知っていたことに私は驚いていた。
もっと取り乱すのかと思っていたけれど、それとはむしろ逆。
冷静に。
いや、冷たくママは佇んでいた。
「どこまで、と言いますと?」
「貴方が知っていることを、教えてもらえれば十分だわ」
「はい。自分が妾腹だということは、知っています。母が、あなたをとても苦しめたことも。不倫で自分が生まれたことも」
「そう・・・。不倫だ、と」
「はい。母からはそう聞いています」
圭都の言葉に、ママは冷たく笑った。
乾いた笑い声。
ママの顔には嫉妬よりも憎悪が浮かんでいるようだった。
純粋に怖かった。
杉本さんの目と、あまりにも似たママが。
「不倫、ねぇ。それは正しい表現ではないわ」
「え?」
「不倫・・・なんて、一言で片付けられるほど、綺麗なものなんかじゃないわ」
ぞっとするほどの暗い声。
ママが遠い記憶を呼び起こしている。
圭都はそんなママから目を離すことはなかった。
「お母さんは、圭子(ケイコ)さんとおっしゃったわよね?櫻井圭子さん」
「はい」
「私は、一度しかお会いしたことがないの。快斗の亡くなった時に、一度だけ」