だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「わあ・・・」
湊の選ぶ部屋は素敵な景色の部屋ばかりだ。
函館に行った時も、今この瞬間も。
目の前に広がる雪景色の湖は、大きなガラス窓の全面に映し出されていた。
「気に入った?」
後ろで荷物を置く音が聴こえた。
足音と共に湊の気配が近付いてくる。
隣に並んだ湊を見上げる。
目が合うと、湊は満足そうに微笑んでいた。
「綺麗・・・」
雪が降ったり止んだりを繰り返して、時折眩しい日差しが湖に差し込む。
光が雪と湖面に反射してきらきらと波打っている。
私が放つ短い言葉が、湊に届いていることが嬉しかった。
「時雨に見せたいと想っていたんだ。綺麗なものを見るたびに、いつも想う。見せてあげたいな、って」
いつだったか。
同じ気持ちを共有できれば一緒にいるのと変わらない、と湊は言った。
あれは確か、私が中学生の頃だった気がする。
春の終わり。
桜の木を見に行った事があったとき。
「見せてあげたいと想ってくれた景色を、本当に見せてくれるなんて」
「うん。だって、それがしたかったから」
「この場所で同じ気持ちでいられるなんて、幸せだね」
私が言った言葉を聞いて、とても優しく湊は笑った。