だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「それに、柴田の姓にしておかないと、貴方が父親を探せないと想ったから」
「それって――――」
「知っていたわ。貴方が生まれてくることを。圭子さんのお腹にいる時から、ずっと」
そんなこと、って。
ママはとても『快斗さん』という人を大切に想っていたのに。
裏切りとも取れるその子供のことを、ずっと知っていたというの?
圭都の手に力が入る。
微かに震えているのは、自分なのか圭都なのかわからなかった。
「子供が生まれて、静かに暮らしていくはずだった。
看護師という仕事柄、収入や仕事に困ることはなかったし、快斗はなんでも出来る人だったから。
ただ毎日に一緒に過ごせる幸せが、ずっと続くのだと想っていたわ。
でも、快斗はいなくなってしまった。
交通事故という、いつ誰に起こってもおかしくないことは良く分かっていたはずなのに。
それは、湊が一歳になる少し前のことよ」
「え・・・?一歳になる、前・・・?」
「そうよ」
ママの言葉に圭都が非道く動揺している。
あからさまに変わった圭都の様子に腕を強く引く。
それに反応できないほど、圭都は狼狽えていた。
「待ってください・・・。俺と湊は二歳の年の差があるんですよ・・・」
「そうね」
「でも、その前に快斗さんはなくなったんじゃ・・・」
「そうね」