だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「快斗と湊と。・・・同じ目を、するのね」
ママは嬉しそうに圭都の顔を見た。
そこに重ねる面影があることを知っているけれど、柔らかな目は確かに圭都を見つめていた。
その目の優しさは、すぐに消えてしまうとわかっていても。
私はその一瞬が、とても嬉しかった。
「圭都さん。貴方は体外受精児よ」
「・・・は?」
「いつか快斗がいなくなった時のために、柴田の家は快斗の精子を冷凍保存していたの。それを圭子さんの卵子と人工授精させたのが、貴方」
音が消えた。
誰もが息を呑んだ。
知らず知らずのうちに、涙が頬を伝った。
人工・・・受精・・・?
そんなことが、本当にあるの・・・!?
「圭子さんは『快斗と結婚をさせるため』だけに育てられたようなものよ。もしも快斗にその気がなくても、子供だけは作れるように、と」
「それって・・・」
「快斗があまりに良い遺伝子を持っていたから、その子供を産むためってとこかしらね」
非現実的過ぎて、頭がついていかない。
そんなことが本当に有り得るの?
もう、私にはわからなかった。
圭都を支えなくてはと想っていたのに、今は圭都に縋り付く以外に何も出来なかった。
「圭子さんは全て覚悟の上よ。妊娠した子供を自分で育てることが出来ないことも、覚悟して産む決意をしたの」
「どういう、ことですか・・・?」
「柴田の養子にするために快斗と自分の子供を産む、ということよ」